へその緒を切りたい

我が子のお話し

「あるべきようは」の記事を書いていて、次女の出産の時を思い出しました。私の記事には度々登場する長女のことです。当時5歳の長女は、次女がお腹にいるとき、やたらと妊婦検診について行きたがりました。モニターにお腹の中が映ると、まだ、丸い形しか見えない状態でも、興奮して、モニターに向かって、「お豆ちゃん、お姉ちゃんやでぇー!!」と激しく手を振っていました。丸い形がお豆に見えたようです。近くにいた助産師さんが、「お姉ちゃんすごいな」と笑っていました。毎日のようにお腹に話しかけ、生まれたら「お姉ちゃんと遊ぶんやで」と洗脳しているようでした。

出産が近づき、徐々に名前をどうしようかなんて話しになります。長女は知らないうちに次女に名前を付けていて、勝手に、その名前を呼んでお腹に話しかけていました。我々、夫婦は、子供のすることだと特に何とも思わずに、自分たちでも名前の候補を考えていたのです。ところが、いざ、名前を決めようと夫婦の意見を出したとたんに、長女が烈火のごとく怒りだしました。「私が、もう名前を決めたでしょ!!!」と…。我々は目が点に。「いや、それは、あなたが勝手にそう呼んでいるだけだから、お父さんもお母さんも一緒に決めたいやん。」というようなことを言ってみたのですが、一切、聞く耳を持たず。「それじゃあ意味ないやんか、ずっとお腹に話しかけてたのに。赤ちゃんももうお名前覚えてはるのに。ひどいやんか。」みたいなことを言って憤慨しておりました。なるほど、ほかの名前を付けるとお姉ちゃんにとっては、これまでのお腹への洗脳の努力が水の泡なわけだなと納得いたしました。しかも、その名前がまあまあ良い名前だったのです。どうしようかと少し悩みましたが、結局、漢字だけ親が考えることにし、音は長女の名づけに従うことにしました。

さて、出産の日、この時は先に破水してしまったので、すぐに母に連絡をして駆けつけてもらいました。また、当時まだ京都にいた私の妹(現在ドイツ在住)も来てくれて、夫と長女と4人で立ち会ってくれました。毎度、立ち合い人数の多い出産なのです(前回記事参照)。

いざ、赤ちゃんが出てくるとなったときの長女の様子は、もはや異常行動でした。私は陣痛中ですから、鮮明には覚えていないのですが、母や助産師さんがあきれ果てて、色々と報告してくれました。私も、意識の遠くでなんとなく聞こえていたので、様子を聞けばだいたいわかります。

まず、赤ちゃんが出てくるところは血も出ますし、恐らく少しグロテスクでしょうから、普通他の人には見せませんよね。もちろん、助産師さん達や先生は長女にも見せないようにしようと、視界を遮るような配置についてくれていたのです。ところが、どうしても見たい長女(どうしてそんなに見たかったのかはわかりませんが)が、無理やり前に回り込み、一生懸命観察しはじめたらしいのです。助産師さんも、もう生まれてしまうし、あまり、無理にさえぎってややこしくなっても困るので、ここまで来たら、仕方がないと途中からほうっておいたそうです。それでも全く動じない娘を見て、病院のスタッフさん達は「助産師さんになったら」と勧めていました。生まれてすぐ、次女は少し羊水を飲みすぎていたようで、吸引されていたようなのですが、私には、長女が大声で、「生まれた。生まれた。」と騒いでいたような記憶があります。吸引が落ち着くと、いよいよへその緒を切るのですが、この時がすごかったのです。

さて、どうも、長女は、自分自身が生まれたときはお父さんがへその緒を切ったということを聞いていたようです。私も話していたかもしれません。確かに次女の妊娠中、「お父さんが私のへその緒を切ったなら、次は私が切っていいよね?」といった趣旨のことを聞いてきた気もします。私も「先生が良いって言えば、良いかもね。」くらいの返答をしていたと思います。ところが、これが彼女の中では完全なGOサインになっていたようです。先生が「さあ、へその緒はお父さんかな?」と言った瞬間に、ものすごい勢いで手を挙げた長女。主人の前に回り込み「はい!はい! へその緒は私です!!!」と名乗りを上げたわけです。

すると、お世話になった産婦人科がなんとも柔軟な産婦人科でして、先生が長女に「わかった、お姉ちゃんですね。では手出して、指広げて!」と言って6歳の長女にビニールの手袋をつけ、「一気に切ってね!」とハサミを渡したのです。私は、出産直後の意識がふわふわするなかで、「??、本当にあいつが切るのか?大丈夫なのか??」と思いましたが、私にはどうすることもできませんでしたので、お任せしておりました。めでたくへその緒を切り終わった長女は満足げに帰っていきました。

以上の様子は主に、その場にいた母が話してくれたことですが、長女のことを考えれば、実に彼女らしい行動です。だいたい、何にでも顔を突っ込まないと気が済まない性格で、どこにでも参加したがるのです。自分が主役でない時だって、気づくと主役を持って行ってしまうのです。自分の主張が強くて、何度怒られても全くへこたれないのです。いかにすれば、自分の要求が通るかばかり考えていて遠慮と言うことを知りません。ダメな時は仕方ないけど、ダメじゃないかもしれないから、とりあえず言ってみないと損だと思っているのです。正直に言って、最近ではちょっと珍しい感じの子ではないかなと思っています。正直に言いますと時々、大嫌いと思うこともありますが、でも結局大好きです。ちなみにそれからしばらく、「赤ちゃんは、お股からにゅるんと出てくるんやで!」と得意げに言いまくっていました。本当にしっかり見ていたのですね。

いまだに、長女は次女に「あんたの名前は私がつけたんやで、良い名前やろ、あんたにぴったりやん。へその緒だって私が切ったんやで。」とまるで、次女が今ここにいるのは私のおかげだと言わんばかりの発言をいたします。それでも次女は感心して「お姉ちゃんすごいな、ありがとう。」なんて言うものですから、何だかんだと喧嘩することが多くても、基本的に二人の関係は良好なのです。

母の友人が「となりのトットちゃんみたいな子だね。」と言っていたそうです。私も本を読んだことがありますので、妙にしっくりきました。本当に現代のトットちゃんです。

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